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つらいことがあった夜(エネマグラ妄想小説)

 つらいことがあった夜。わたしはエネマグラに苛められなきゃいけない。

※誰かが言う。わたしは高校生の女の子だ。普通の人間の女は、男に恋し、前立腺なんかない。けれど、そんなことはどうでもいいじゃない、と。わたしは女の子が好きだし、前立腺もあるけど、そこに疑問を持ったことはない。……そう誰かが言う。

 今日、とてもつらいことがあった。だからわたしは机から白くてくねったエネマグラを取り出して、私のお尻に入れなければならない。
 約束をはたさなければならない。
 わたしは、エネマグラの凹凸、わたしの中をかき回す部分をそっと撫でた。あんまり酷くしないで。そう、お願いするみたいに。

 エネマグラにキスをすると、みさきちゃんとキスをしているような不思議な気持ちになる。逆らえないみさきちゃん。怖いみさきちゃん。綺麗で、自信満々で、わたしに酷いことばかり言うみさきちゃん。
 ……今はもういない、みさきちゃん。
 みさきちゃんのいたずらっぽい笑顔を思い出すだけで身体の芯が煮えるみたいに熱くなる。怖くて情けなくて哀れだけど、わたしの身体はみさきちゃんを思い出しただけでこうなるようになってしまった。
「ふうぅ……」
 息をついたらもう熱かった。エネマグラを持っているだけでこうなのだから、入れたらどうなるだろう。
 裸になって、股の間に手を入れる。セックスをするのではない方の穴へ、自分のでも触るのを躊躇う、お尻の穴へ。
 ローションをつけてちょっと指をくねらせると、わたしのお尻はすぐに指を飲みこんだ。
 最初は心も肉体も抵抗のあったことが、徐々に解けて慣れてゆく。
 どんなに嫌でも、みさきちゃんの命令ならやらなきゃいけない。
 こんなことにも慣れていく自分はちょっと情けない。

「ん……」
 そっとエネマグラをお尻に沈める。
 異物感がすごい。ずっとウンチをしているような、いけない感覚。
「あぐっ……」
 慌ててお尻に力を入れて、後悔した。
 中に入ってる部分がお尻の穴に向けて細くなってるエネマグラは、ウンチをこらえるようにするとぬるっと中へ入って余計にお腹の中を圧迫する。
 普段は触れられることのない、直腸の内壁。内臓の内側。
「ああぅ、はぁ、はぁ……」
 痛覚神経の発達していないそこは、圧迫すると確かに痛い。けれどそれは皮膚を叩いたりするのと違った感覚。熱くて重くて苦しい感覚。
 反射的に、いきんで中身を全部出してしまいたくなる苦しさだった。
「ん……」
 刺激しすぎないようにそっとクローゼットに行って、引き出しからよれよれのセーラーとスカートを出す。
 襟元をそっと鼻に近づけると、少し湿っぽい有機的な匂いに混じって、甘いオレンジの香りがする。忘れられない、みさきちゃんの体臭。
 これは、みさきちゃんの制服だ。
 裸のまま、下着を着けないで袖を通し、スカートのフックを留める。みさきちゃんの匂いに包まれて、まるで後ろから抱かれているような気分。
 負ぶさったり、抱きついたり、わたしを枕にして寝ちゃったり、みさきちゃんに物扱いされたときの情けない気持ちがせり上がってくる。
「っくぅ……」
 想像してお腹の底がじいんとした。そんな想像に、エネマグラはちゃんと答えてわたしの中を擦る。たまらず息を止め、またそっと落ち着かせるように息をついた。
 わたしは、ゆっくりベッドに上がり、寝転がった。
 目を閉じる。
 いなくなってしまったみさきちゃんは、目を閉じた闇の中にはちゃんといた。

 みさきちゃんは、一人ぼっちだったけどいじめられない子だった。
「良いモン持ってるね。それちょうだい」
 わたしが四人組のいじめっ子に囲まれているところに、みさきちゃんはやってきた。いじめっ子も、みさきちゃんには手が出せなかった。廊下ですれ違う時も、みさきちゃんに道を譲って、通り過ぎてから舌打ちする。そんな風だった。
「何か用? 今取り込み中なんだけど」
「言ってるじゃん。それちょうだい、って」
 それ、といってみさきちゃんが指したのは、わたしだ。
 みさきちゃんはその場で財布を出すと、一万円を四枚ぱっと投げた。数えてた風じゃない、つかんだ枚数が、たまたま四枚だった、みたいに。
「……あんたらのおもちゃを売ってくれ、って言ってんだけど。売るの? 売らないの? 答えてよ」
「あ……」
 四人組のリーダーみたいな子、さえさんが、お金に目を落としてからみさきちゃんを見上げた。他の子は、もうお金を拾ってた。
「……金返せって言っても遅いからね?」
 さえさんが悔しそうにそう言うと、みさきちゃんは笑った。
「いいよ。これ返せって言っても応じないから、お互いさまよ」
 みさきちゃんは、そう言ってわたしに指で合図した。舌でチッチッと音を出しながら。
 ……猫を呼ぶときみたいに。
 状況に翻弄されてわたしはすごくびくびくしてたけど、頭の隅の冷静なところでは、ちょっと思ってた。
 ずいぶん良い値を付けてくれたなぁ。って。

 わたしは、みさきちゃんに買われちゃった。
 だから今、こんなことになっている。
「ぁっ……、はぁっ……、はぁっ……」
 仰向けになってお尻の中の違和感が消えてくると、身体全体の感覚が冴えてくる。
 わたしは今、裸でみさきちゃんの制服を着ている。
 お腹が、内腿が、乳首の先が、みさきちゃんの制服に触れて、擦れている。
 裸にされて、みさきちゃんに抱きつかれてるみたい。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
 エネマグラの感覚はもう分からない。代わりに、お腹の底の方、子宮のあたりに、呼吸するたびに変な感覚がある。どくんどくん脈打つ、小さな卵が入ってるみたい。
 エネマグラが、前立腺の少し上に収まって、わたしがお尻に小さな力を入れるたびにぺたぺたと前立腺をノックしてる。ただそれだけなんだけど。
「あっ……、ん、はぁっ……」
 お腹の底の脈動は、息を吸って、みさきちゃんの香りを感じたときに強く打つ。
 まるで、みさきちゃんがわたしの身体の中からわたしを苛めてるみたい。わたしがみさきちゃんを、忘れないように……。

「卵焼きちょうだい」
「あ、……はい」
 みさきちゃんはお昼にわたしを中庭に連れ出す。
「はいっつったな? 敬語やめろって言ったよな?」
「あっ! う、うん」
 みさきちゃんがわたしを睨んだ。
 もうダメだ、って思った。
 わたしは慌てて俯いたが、みさきちゃんの指が二本、わたしの顔の前に差し出された。
「口開けろ」
「…………」
 わたしは、みさきちゃんのものだ。開けろといわれて開けないことは、できない。
 わたしが口を開けると、みさきちゃんの指は容赦なく口の中へ入ってきて、舌の上を強く撫でるようにして、喉へと進んだ。
「……っごぇ」
 舌の奥の方を触られると、吐きそうになる。
「我慢しろ」
 みさきちゃんは親指で顎を挟み、下あごをつかむみたいにしてわたしを苛める。
 唾が湧き、嘔吐感と舌の圧迫感で脳が痺れてくる。呼吸は何とかできるけど、息をするたびに鼻の奥がつーんとして涙が出てくる。
 どのくらい我慢したか、不意にみさきちゃんの手がどけられる。
「けほっ! けほっ、けほっ!」
 わたしは泣きながらむせた。
「卵焼きちょうだい」
「は……、う、うん。いいよ」
 わたしが何とか応じると、みさきちゃんはいたずらっぽく笑って自分の指を舐めた。
 わたしの口の中にずっと入ってた、わたしの唾でべたべたになった指を。

「ああっ……! あ、あ、あ……」
 総毛立つような快感の波が身体を襲った。
 お腹の底の卵が、びくっと鳴動したみたいに。
「ああ……、やっ、すいっち、はいっちゃった……」
 わたしは何もしていない。ただ、みさきちゃんにされたお仕置きを思い出しただけ。
 エネマグラにスイッチはない。
 ただ、わたしは仰向けに寝ていただけ。エネマグラもわたしの中に収まって、わたしの呼吸といっしょに微動していただけ。
 それなのに、このエネマグラっていうものは、どんどん気持ち良い波を送ってくるようになる。
 最初にこれに遭遇した時にはびっくりした。けど、今はもう、慣れてしまった。
「あぅっ……、もう、やだ、よ……」
 ただ、ああまたぐっちゃぐちゃに狂わされるんだ。って、思うだけ。
 わたしのスイッチは、入っちゃった。
 あとはもう、エネマグラを抜かない限り、何をしても逃げられない。
 抜くことは許されない。
 つらいことがあった夜、わたしはこれに苛められなければいけない。

 みさきちゃんがわたしの所有者になってから、苛められることが減った。
 みんなみさきちゃんが怖くて手が出せないんだと思った。
「調子に乗ってんじゃねぇぞ?」
 けれどその日は、珍しく苛められた。
 苛められたというより、誰も見てない一瞬を見計らって後ろの席のかなさんにお尻を蹴られただけなんだけど。でも直接殴ったり蹴ったりっていうのは珍しくて、その日は後ろから何かされるんじゃないかって一日すごく怖かった。

 誰もいない屋上で、みさきちゃんはわたしのお腹を摘んでいた。
「きゃっ!」
「微妙に固い。もうちょい太れ。寝心地が良くない」
「…………」
 みさきちゃんがこういうことをするのはいつも通りで、でもかなさんに蹴られたのはいつも通りじゃなかった。だから、わたしは明日からもかなさんが蹴ったりするのかどうかが不安で、みさきちゃんの行為は普段ほど怖くも、嫌でもなかった。
「……さゆ?」
 気付くと、みさきちゃんがわたしの目をじっと覗き込んでいた。心配そうな、悲しそうな目で。
「……えっ!? な、なに?」
「何考えてた?」
「ご、ごめん、ちょっとぼーっとしてひゃあうっ!」
 お腹をつねられた。
「何か辛そうな顔してた。何考えてた?」
「…………い、痛っ」
「言って。正直に、全部、本心から、包み隠さず」
「言う! 言うからっ! 離して、痛い……」

 わたしは座り直して、はだけていたお腹を元に戻した。
「いつものことなんだけど、わたしクラスで嫌われてるの」
 誰にやられたかだけぼかして、蹴られたこと、明日からのことを心配していたこと、を喋る。
 そのそばからどんどん不機嫌な顔になるみさきちゃんが、怖くて仕方なかった。でも、言えと言われたら言うしかない。
「誰にやられたの?」
「それは……」
 言いたくなかった。
 みさきちゃんがかなさんに何か言ったら、かなさんに告げ口したと思われる。そうなったら次は何をされるか分からない。
「言って。全部言ってって言ったよね?」
「……でも」
 言わなかったら、また酷いことをされるんだろうと思った。この表情から、きっとすごく惨めで、すごく恥ずかしくて、すごく苦しいことだろうと思った。
 でも、みさきちゃんに確実にされるそういうことより、わたしはいつ何かされるか分からないかなさんの方が怖かった。
「言わないんだ? さゆはあたしの物なのに言わないんだ?」
「ごめんなさい」
 さて、何をされるだろう。そう思って恐る恐るみさきちゃんの顔を見上げる。
 いつでも真正面からわたしの目を見るみさきちゃんは、珍しく顔を伏せていた。
「……もういい」
 みさきちゃんは、本当にみさきちゃんの声かと思うほど小さな声でそう言って、わたしに背を向けた。
 一歩進み、二歩進み、みさきちゃんはわたしから遠ざかってゆく。
 わたしを一人、何もない屋上に置き去りにして。
 突然吹いた風は、身体に大穴が開いているみたいにわたしの中を通り抜けていった。すごく、寒かった。今まで感じたことがないくらい。
「……え?」
 頭より先に心が理解して、目頭がかっと熱くなって、立ち上がって走った。
「ま、まって……、みさきちゃん、待って!」
 何をする気だったのか、何を言う気だったのか、覚えてない。ただ、みさきちゃんが屋上と階段を隔てるドアの向こうへ消えてしまったら、終わりだと思った。
 踊り場へ出て、後ろ手で勢い良くドアを閉めようとするみさきちゃんに向けて、ドアの隙間に向けて、わたしは手を伸ばす。
「みさきちゃん!」
 勢いをつけて締まるはずだったドアは、枝一本ほどのわたしの腕を異物に挟んで、ぐぎっ、と不平をもらした。
「いっ……、た……」
 小気味良い激痛が走った。
 わたしが慌ててもう一方の手でドアを支えると、みさきちゃんが驚いて振り返っていた。
 みさきちゃんの綺麗な目には、涙がたまっていて……。
 その涙は、タイミング的に今出たわけじゃなくって、もういいって言ってわたしから離れた時に出た涙なんだって気が付いて、身体の芯がかあっと熱くなるのを感じた。
 何でか分からないけど、その涙を見て、生きてて良かったと、追いかけて良かったと、思った。

 お腹の底が、燃えるように、つめたい。
 小さかった卵は、子宮の上で今はボウリングの玉くらいの大きさになって、下半身を圧迫してる。
「ああっ、んうっ! ……ああっ、あ、ああっ!」
 呼吸が出来なくて、苦しい声ばかり出る。
 目を開ければ、そこには制服を着た自分の身体が寝ているだけ、何に苛められてるわけでも、何に伸し掛かられているわけでもない。だから、逃げられない。わたしが苛まれているこの苦しくて辛い気持ちは、わたしの身体の中で起こっている。
 エネマグラは、もう自分で分かるぐらいひくひく動いていた。動くたびに前立腺を擦られて、その快感が背筋を上って脳に上がってくると、みさきちゃんの酷い苛めを一つ思い出させる。
 みさきちゃんの苛めの記憶は、どれもお腹の底に来る。何もしてないのにかっと熱くなって、わたしのお尻の穴は、勝手にきゅっと締まる。
 きゅっと締まると、また前立腺が擦られて……。
「ああっ、あはぁっ、あ、ああっ! く……んはぁっ!」
 そう、この循環からわたしはもう逃げられない。
 それから、さらにタチが悪いことに、あれほど苦しくて惨めで恥ずかしかったみさきちゃんのいじめが、エネマグラで苛められながら思い出すと、酷く甘い記憶に置き換わる。
「はぁんっ! あ、ああっ、ああ……」
 喉の奥に指を入れられて、気持ち良かった。
 四つん這いで歩けって言われて、気持ち良かった。
 外の芝生で下着一枚にされて、気持ち良かった……。
 後から後から湧いてくる記憶は、まるでわたしが変態だったみたいに、甘美だ。
「はあっ、はあっ、はあっ……」
 そっと自分の腕を見る。
 ドアに挟んだ傷は、しばらく残ったけど今は消えてしまった。
「ああ……、んくっ、……そっか」
 腕を見ながら、わたしは気付いた。
「みさきちゃん、わたしに、傷、つけない、んだ」
 痛いことはたくさんされた。つねられたり、首絞められたり。
 でも、みさきちゃんはわたしに絶対に傷をつけなかった。
 お気に入りのぬいぐるみみたいに、大切に大切に、遊んでもらえた。
「あっ…………、っ! あ、あああああっ! ……っくぅ、ん……」
 エネマグラが、わたしの思考を読んだみたいにびくびくびくっと震えた。
 ……みたい、じゃない。これは本当に、わたしの思考と、直結してる。
「っ……、っく…………ぅ……」
 息が出来なくなる。
 このまま死んでしまいそうなほどに。
 それでも、お尻の中のエネマグラを、わたしの身体はびくびく痙攣させ続け、どんどん脳にみさきちゃんの記憶を送り込んでくる。
 死んじゃう……。
 そう、思った。

 わたしは、みさきちゃんに、かなさんのことを告げ口した。
 みさきちゃんは泣きながら笑った。
 みさきちゃんはそれから、わたしにスカートとパンツを脱いで、お尻を出すように言った。
「あたしがさゆに一番酷いことするんだ。かななんかにあげない」
 みさきちゃんは靴を脱いで裸足になってから、思いっきり私のお尻を蹴った。
「いっ! ……っ! ああっ! あ……っ!」
 何度も、何度も。
 それから、平手で叩いた。
 それも、何度も、何度も。
 それから、わたしのお尻の穴を、指で何度か撫でて、息を吹きかけた。
「ひぃ……っ!」
 わたしが背を逸らして逃げようとしたらお尻を抱き込まれ、そのままお尻の穴にキスをされ、穴の中に舌を入れられた。
「やだ、きたない! 恥ずかしい……!」
 肩越しに振り返ると、顔を上げたみさきちゃんが唇を舐めて笑う。
「恥ずかしい?」
「……うん」
 わたしがそう返事すると、満足そうに笑ってまた舌を入れてわたしの校門を舐め続けた。
 わたしがわけわかんなくなっておしっこを漏らすまで、それは続けられ……、その日わたしはべとべとのパンツをはいて帰る羽目になった。

 苦しかった呼吸は、あるところで平気になる。
 苦しくなくなるわけじゃなくて、気持ち良すぎてどうでも良くなる。
「ぅくっ、んうぅくぅうっ! んぁああああっ! ぁ、あああっ、あっ、あっ!」
 はじめはお腹、それから首、両手足、いたるところに一気に力が入る。入れてるつもりもないのに、痛いくらい、勝手に。
 それから、勝手に声が出始める。
 あとは、力を入れれば入れるほどに、声を出せば出すほどに、腰全体がどんどん気持ち良くなって、自分がどこにいるのか、分からなくなる。
 いじめとか、つらいこととか、痛みとか呼吸とか何もかもがどうでも良くなる。
 気持ち良い……。
 もうやめて、分かったから止めて。
 気持ち良い。
 良すぎて、良すぎて、泣く。身体が勝手に泣く。
「あああああああああっ! んぁああああああああっ!」
 あんなに辛くて苦しいと思っていたのに、心が快感を欲してどんどん壊れて行く。
 わたしが、性欲狂いにされて行く。
 気持ち良い。気持ち良い。
 ……たすけて。

 わたしが腕を怪我して、みさきちゃんが泣いた日。
 あの次の日、かなさんは学校に来なかった。
 お昼にはみさきちゃんがわたしを連れて屋上へ行った。いつもの中庭じゃない、誰もいない屋上。
「かなは、倒した」
「……え?」
 珍しく真剣な顔で、みさきちゃんが言った。
 でも、すぐに笑顔になった。
「さゆ。これ、持ってて」
 渡されたのは、白い、へんてこな形をしたプラスチック。
「なに、これ?」
「エネマグラ。こうやってお尻に入れておくと、何度も何度もイっちゃう」
 みさきちゃんは指でお尻の穴を作って、実演して見せた。
 わたしの顔がかあっと熱くなった。
「つらいことがあったら、これ入れて寝て。……絶対」
「え?」
「それで、わたしのしたことを思い出して」
「……みさきちゃん?」
 みさきちゃんは、目を逸らして、ちょっとだけ頬を赤らめた。
「さゆに一番酷いことをするのは、あたしなの。だから……」
 何でも好きなことを言って、何でも好きなことをやっていたみさきちゃんがこうやって何かを言いにくそうにするのを、わたしははじめて見た。
「だから、つらいことがあった夜は、あたしのエネマグラでもっと辛い目に遭え。良い!?」
「…………うん」
 みさきちゃんが言うんだから、きっと酷いことになるんだろう。
 そう思ってわたしは唾を飲みこんだ。

 かなさんを鉄パイプで殴って骨折させた罪で、みさきちゃんは転校した。執行猶予がどうとか保護観察がどうとか聞いたけど、みさきちゃんがいなくなるという意味以上の何かではなかった。

「かはぁあっ!」
 飛びかけた意識が戻って、止まっていた呼吸をぜいぜいと再開する。
 呼吸が戻っても、快感のレベルは戻ってこない。お尻の穴の奥はエネマグラで擦られたまま、何度も何度もびくびく脈動している。そのたびに快楽物質の海に浮かんでいるような、薬を使われたような恍惚感が身体を襲う。
「はぁっ……、はぁっ……、……ぁ、また、すいっち……」
 ここからが、地獄だ。
 快感のレベルは戻ってこないのに、身体のスイッチが入ればまた絶頂へ向けてあの無限ループがやってくる。
「もう、やだ……、いじめ、ないでぇ……」
 エネマグラを抜くか、力尽きるか。それしか逃げ出す方法はない。
 最初はダメだ。みさきちゃんとの約束は、守らなきゃいけない。わたしはみさきちゃんの物だから。
 だから、力尽きて眠るまで、わたしはこれを続けなければいけない。
「あ、あああああっ……」
 呼吸が狭まる。
 また、心臓の鼓動が大きくなる。
 快感は、最初の比じゃない。さっきの絶頂寸前くらいの快感の波に、さらにお腹の底から送られてくる快感が重なる。一度で飛びそうになる快楽を、またイくまで浴び続けなきゃいけない。
「あ、ああっ。ひ……、ぃいいいいいいっ!」
 あ、また波が来た。
 イったって、終わりじゃない。
「イっ……、くぅぅうううっ……、ん、ぅ……、っぁああああああああ!」
 呼吸が出来なくなり、快感の波が押し寄せ、全てが分からなくなる。
 真っ白。
 ああ、みさきちゃん、みさきちゃん……。
 わたし、変になりそうだよ。
 酷い目に遭ってるよ。辛い目に遭ってるよ。でも、わたしこれなしじゃ生きていけなくなってる。一度イくごとに、そういう身体に、されてるの。
 ねえ、みさきちゃん。
 変になっちゃうよ。
 わたし、もう今日なにが辛かったのか覚えてないの。
 このままじゃわたし、これが欲しくてわざわざ辛い目に遭おうとしちゃうよ。
 変態に、なっちゃうよ……。
 みさきちゃん。
「……っくぅああああああああああっ!!」
 全身がぎゅっと強張って、快感の波が隅から隅まで駆け巡る。
 それがじわっと落ち着いてくると、意識が少しはっきりしてくる。
「っはぁっ!! ……っはぁ、はぁ」
 呼吸が、戻る。
 また、少し落ち着く。
 でも快感はやっぱりイく直前の状態を保って……。
「みさきちゃん……」
 みさきちゃんの名を呼んだ瞬間、またスイッチが入った。
 気持ち良い。
 気持ち良くて、死んでしまいそう。
「みさきちゃん、みさきちゃん! あうぅっ……!」
 呼べば呼ぶほど、お尻の中のエネマグラが自分の身体じゃないみたいにがくがく動くのが感じられる。
 呼べば呼ぶほど、さらにさらに苦しく辛い、酷い絶頂へと追いやられる。
「みさきちゃん、みさきちゃん、みさきちゃんっ!」
 それが分かってて、でもわたしは呼んでた。
 何度も何度も、おかしくなったみたいに呼んでた。
「あ……、ああああっ! ……くっ、ぅうううううっ!」
 また呼吸が止まる。
 何度目だろう。数なんて、もう数えられない。
「みさき、ちゃ……んんんぅううううっ! ん、はぁああああああああっ!!」
 ……来る。
 さっきより、さらにさらに高い、快楽の波。
 イっちゃう。
 イかされちゃう。
 ……みさきちゃんに。
「っ………………!」
 脳が、フラッシュした。
 身体が、跳ねた。
 呼吸が止まって……、自分はもう死んでるんじゃないかって、錯覚する。

「どう? つらい? さゆ?」
 真っ白な視界に、羽の生えたみさきちゃんがいた。
 わたしのお腹に座っている。
 みさきちゃん、わたし、死んでもいい。
 ……んーん、みさきちゃんに苦しめられて、イかされ狂って死にたい。
 あ、今もうそうなってるのかな?
「さゆを一番苦しめるのはあたしだから。あたしじゃない人に苦しめられたらダメだから」
 みさきちゃんが、いたずらっぽく笑う。
 みさきちゃん。
 みさきちゃん……。
 ああ、そっか。
「ん? どうした?」
 わたし、みさきちゃんを愛してる。
「ああ、そ?」
 いっつも、ここに来ると思い出す。みさきちゃんの名前を呼ぶのも、みさきちゃんにこうやって苛められるのも、死んでもいいって思うくらい好き。
 それなのに、エネマグラに苛められ切って寝ちゃうと、忘れちゃうの。
「じゃあ、忘れてたらいいよ」
 え?
「じゃないと、次んとき苦しまないでしょ? あたしのさゆが」

 何度もイって、怖いくらい身体中気持ち良かった。
 真っ白な視界の中に誰かいた気がして、それがとても怖い人の気がして、わたしを苛める人の気がした。
 でも、わたしは死んでも良いくらいに愛してた。その人の、いたずらっぽい笑顔を。
 心まで全部快感に染め上げられて、変質させられちゃったわたしは、そういうことをどうやら本気で思ってしまうみたいだ。
「っくはぁっ! ……はぁあっ、はぁあっ、……はぁ」
 ……そんなことを思いながら、わたしの意識は、快感に飛んだ。
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